和歌山県における空き家分布推定に関する研究(令和2年度)

総務省統計局、(独)統計センター、和歌山県、和歌山市及び東京大学との共同研究プロジェクト

作成日時
公開日時
2022年3月10日 09時24分
最終更新
2022年3月10日 09時24分
更新回数
0回
作成者
機関名
東京大学
所属
空間情報科学研究センター
氏名
秋山祐樹
概要 令和元年度の研究では、和歌山市の保有する公共データ(住民基本台帳、建物登記情報、水道使用量情報、空き家実態調査)を利用し、データの前処理など一連の過程を経て、同市の空き家分布を推定する機械学習モデルを構築した。その結果、一定の精度を保証できるモデルが構築できた。一方、自治体の保有データのみを用いて分析を行ったため、自治体保有データを使用することが困難な自治体においては適用が困難であることが課題となっていた。

そこで、令和2年度の研究ではさらに公的統計(国勢調査)を追加してモデルを構築することで、公的統計から抽出した特徴量が空き家分布の推定精度向上にどれほど寄与するのかについて分析を行った。また、自治体保有データを用いることなく国勢調査のみを用いた推定手法により、どれほどの推定精度を確保することができるのかを明らかにし、他の自治体への適用可能性についても検討した。
カテゴリ 分析種:経済分析、社会分析
分野:暮らし、まちづくり
分析結果

●公共データのみを用いて分析したモデルと、公共データと国勢調査の両方を用いて分析したモデルを比較した結果、国勢調査を加えたとしても推定結果が改善することはなかった。この原因としては、公共データは建物単位で集計が行われている、非常に空間解像度の高いデータである一方、国勢調査は基本調査区単位で集計が行われていたため、公共データに比べてデータの空間解像度が低く、推定モデルにうまく反映されなかったためだと考えられる。

●国勢調査のみで基本調査区ごとの空き家率を推定するモデルの予測性能は比較的高かった。すなわち、国勢調査のみを用いた空き家分布推定も、建物単位という高い解像度では困難ではあるが、基本調査区、さらには町丁目や地域メッシュなどの単位における空き家率や空き家数の推定においては、十分に利用価値があることが明らかとなった。

●水道データの吸着有無によってモデルを分類した結果、空き家の分類に予測上重要なのは、水道が閉栓しているか否かということより、むしろ水道データが吸着しているか否かということであると分かった。この結果は、市が行う空き家実態調査の前提に影響を与える。現在の実態調査は水道閉栓情報等を基に空き家候補を割り出しているが、むしろ水道閉栓情報のない建物こそが空き家の候補になり得るからである。

令和2年度 研究成果報告書

研究体制

研究代表者・分担者の別 氏名 所属機関
研究代表者 秋山 祐樹 東京大学空間情報科学研究センター
研究分担者 馬塲 弘樹 東京大学空間情報科学研究センター
研究分担者 左右田 敢太 東京大学空間情報科学研究センター
研究分担者 洪 義定 東京大学空間情報科学研究センター
研究分担者 徳冨 智哉 和歌山県データ利活用推進センター