和歌山県における空き家分布推定に関する研究(令和3年度)

総務省統計局、(独)統計センター、和歌山県、和歌山市及び東京大学との共同研究プロジェクト

作成日時
公開日時
2022年4月19日 15時49分
最終更新
2022年4月27日 14時30分
更新回数
8回
作成者
機関名
東京大学
所属
空間情報科学研究センター
氏名
秋山祐樹
概要 令和元年度の研究では、和歌山市の保有する公共データ(住民基本台帳、建物登記情報、水道使用量情報)および空き家実態調査の結果を利用し、データの前処理など一連の過程を経て、同市の空き家分布を推定する機械学習モデルを構築した。その結果、一定の精度を保証できるモデルが構築できた。

令和2年度の研究ではさらに公的統計(国勢調査)を追加してモデルを構築することで、公的統計から抽出した特徴量が空き家分布の推定精度向上にどれほど寄与するのかについて分析を行った。また、自治体保有データを用いることなく国勢調査のみを用いた推定手法により、どれほどの推定精度を確保することができるのかを明らかにした。

今年度の研究では2つの点について検証を行った。第1に、和歌山市で学習したモデルを異なる地域に適用することがどの程度可能であるかを明らかにすることを試みた。この際、公共データを用いたモデルによる建物毎の予測と同様に、国勢調査のみを用いたモデルによる基本単位区毎の予測も行った。第2に、公的統計を用いた空き家予測モデルを改良するために、国勢調査と住宅・土地統計調査を組み合わせたモデルの予測精度について検証した。住宅・土地統計は国勢調査と異なり、全体の1割程度の調査区を抽出して行われる統計的調査である。従って全ての調査区でデータが整備されているわけではない。しかし、住宅や土地の詳細な情報を含んでいるため、空き家予測には大きく貢献するものと思われる。
カテゴリ 分析種:経済分析、社会分析
分野:暮らし、まちづくり
分析結果

①和歌山県田辺市において、和歌山市で学習したモデルを外挿したところ、公共データを用いた建物単位の空き家検出では適合率・再現率ともに低く、十分な精度が出なかった。一方、基本単位区ごとの空き家率の予測では、地域に関係なく高い精度を維持していた。

②和歌山県田辺市および橋本市において、それぞれの市が保有する公共データを用いた空き家検出モデルを構築したところ、田辺市では空き家に該当するデータに重み付けを行うことで再現率が向上したものの、適合率は減少した。一方、橋本市では、使用するデータを「住基・水道データのみ」、「住基データのみ」と減らすほど、適合率の高さを維持したまま再現率を向上させることができた。ただし、この結果は過大評価されている可能性が高いため注意が必要である。

③国勢調査と住宅・土地統計調査を組み合わせたモデルの予測精度についての検証を行った。その結果、国勢調査に住宅・土地統計調査を組み合わせることで予測精度が向上した。さらに、複数年次の国勢調査を用いることで、空き家率予測の精度がより向上することが確認された。

令和3年度 研究成果報告書

研究体制

研究代表者・分担者の別 氏名 所属機関
研究代表者 秋山 祐樹 東京大学 空間情報科学研究センター
研究分担者 左右田 敢太 東京大学 空間情報科学研究センター
研究分担者 洪 義定 東京大学 空間情報科学研究センター
研究分担者 徳冨 智哉 和歌山県データ利活用推進センター